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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

わたしはお師匠さまから、まえに浮体の術を授かっておりますもの」

「それみよ。なぜいつもその心がけでおらぬ。この鷲に乗っていくのがなんであぶない、浮体の息を心得てのれば一本の藁より身のかるいものだ」

「わかりました。さっそくいってまいります」

「オオ書面にて認めておいたが、時おくれては、武田伊那丸さまのお身があぶない、いや、あるいは小幡民部どのの命にもかかわる、いそいでいくのじゃ」

「そして、だれにこの手紙をわたすのですか」

「高尾の奥院にかくれている、加賀見忍剣どのという者にわたせばよい。その忍剣はこの鷲のすがたを毎日待ちこがれているであろう。またこの鷲も霊鷲であるから、かならず忍剣のすがたを見れば地におりていくにちがいない」

「かしこまりました。よくわかりました」

「かならず道草をしていてはならぬぞ」

「ハイ、心得ております」

と竹童はしたくをした――したくといっても、例の棒切れを刀のように腰へさして、稗と草の芽を団子にした兵糧をブラさげて、ヒラリと鷲の背にとびつくが早いか、鷲は地上の木の葉をワラワラとまきあげて、青空たかく飛びあがった。

伊那丸とちがって竹童は、浮体の法を心得ているうえ、深山にそだって鳥獣をあつかいなれている。