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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

「やい、伊那丸、さッさとこれへでてうせぬか」

猪子伴作は、次にこうわめきながら、駕籠の扉口を土足ではげしくけとばした。と、足もとが、不意に軽くすくわれたので、伴作はあッといってうしろへよろめく。

すわ!

殺気はたちまちそこにはりつめた。天野、佐分利、足助の三人は、陣刀のつかを握りしめつつ、駕籠口へ身がまえた。

三

「おお夜が明けたようだ……」

つぶやく声といっしょに、伊那丸のすがたは、しずかにそこへあらわれた。じたばたすると思いのほか、落ちつきはらったようすに、四天王の者どもはやや拍子ぬけがしたらしい。

「歩けッ」

左右からせきたてて、小船の板子をしいた死の座へ伊那丸をひかえさせた。そして床几にかけた梅雪に目礼をしてひきさがる。

「おッ、伊那丸さま――」

「あ! そなたは」

席をならべて伊那丸と咲耶子は、たがいにはッとしたが、彼女は、せつなに顔をそむけ、なにげないようすをした。で伊那丸も、さまざまな疑惑に胸をつつまれながら、眸をそらして、こんどはきっと、入道の顔をにらみつけた。――梅雪もまけずに、

「こりゃ伊那丸、さだめし今まで窮屈であったろうが、いますぐ楽にさせてくれる。