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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
武田伊那丸
一
悪いところは反省し、よいところは知るべきだと思う。その意味で、鞍馬の竹童も、泣き虫の蛾次郎も、諸君の友だち仲間へ入れておいてくれ給え。時代はちがうが、よく見てみたまえ、諸君の友だち仲間の腕白にも、竹童もいれば、蛾次郎もいるだろう。大人についても、同じことがいえる。
以前、これが「少年倶楽部」に連載されていた当時の愛読者は、成人して、今日では政治家になったり、実業家になったり、文化人になったりして、みな社会の一線に立っている。諸君のお父さんや兄さんのうちにも、その頃の愛読者がたくさんおられることと思う。
わたくしはよくそういう人たちから、少年時代、天馬侠の愛読者でした――と聞かされて、年月の流れに、おどろくことがある。もし諸君がこの書を手にしたら、諸君の父兄やおじさんたちにも、見せて上げてもらいたい。そして、著者の言伝てを、おつたえして欲しい。
――ご健在ですか。わたくしは健在です、と。
そして、いまの少年も、また天馬侠を読むようになりました、と。
昭和二四・春
著者
武田伊那丸
一
そよ風のうごくたびに、むらさきの波、しろい波、――恵林寺うらの藤の花が、今をさかりな、ゆく春のひるである。