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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

四

「おのれッ」

とびついていった忍剣の禅杖が、力いッぱい、ブーンとうなった。とたんに、一陣の怪風――そして、わッ、と、さけんだのはまぎれもない呂宋兵衛である。

たしかに手ごたえはあったらしいが、かれもさるもの、すばやく隠形の印をむすび、縮地飛走の呪をとなえるかと見れば、たちまち雷獣のごとく身をおどらせ、おどろく人々の眼界から、一気に二、三町も遠くとびさってしまった。

「あ、あ、あ、あ、あ!」とさすがの忍剣も、龍太郎もそのゆくえを、ただ見まもるばかり。

目ばたきするまに、二、三町もとんだ呂宋兵衛のあとには、うすい虹か、あわい霧のようなものが一すじ尾をひいてのこった。

四

いつまで見送って、たがいに歯がみしていたところで及ばぬことと、忍剣は一同をはげました。そして、そこにたおれている、伊那丸と咲耶子とに、手当を加えた。

さいわいに、ふたりはさしたる重傷を受けていたのではなかった。けれど、やがて気がついてから、賊将、呂宋兵衛をとり逃がしたと知って、無念がったことは、ほかの者より強かった。ことに、伊那丸は父ににて勝気なたち。

「かれらの策におちて、おくれをとったときこえては、のちの世まで武門の名おれ。