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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

ややあって、忍剣が、こう問いただした。

「ここは、やはり裾野の村、おふたりが間道へはいられた蚕婆の家から、さよう、ざっと五、六町はなれた鏃鍛冶の小屋でござる。すなわち、手まえは主の卜斎ともうす者」

「ではそちも、鏃鍛冶とは世をあざむく稼業で、まことは蚕婆とおなじように、人穴城の見付をいたしているのであろうが!」

小文治が、グッと急所を押すと、卜斎は、ひややかに嘲笑って、

「とんでもないこと、けっしてさような者ではございません」

「だまれ、呂宋兵衛の隠密でない者が、なんで床下から間道へ通じるようにしかけてあるのだ」

「なるほど、それはごもっともなおうたがいじゃ。いかにもこの卜斎鏃鍛冶とはほんの一時の表稼業で、まことはおさっしのとおり隠密にそういない」

「さてこそ、間者!」

小文治と忍剣は、腰の大刀をグイとにぎって、あわやおどりかからんずる気勢をしめした。

片手を斜めにさし向けて、きッと、体をかまえなおした卜斎、

「じゃが、おさわぎあるなご両所、隠密は隠密でも、呂宋兵衛のごとき曲者の手先となって、働くような卜斎ではございません――」

と、左右のふたりへ、するどい眼をそそぎながら、