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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
が――龍太郎のすがたはきょうもまだ見えない。四日のあいだには、かならず兵三百を狩りあつめて、帰陣すると誓ってでた木隠龍太郎。ああ、かれの影はまだどこからも見えてこない。
いよいよ、絶望とすれば、ふたたび、人穴城を攻めこころみて、散るか咲くかの、さいごの一戦! それよりほかはみちがない。すでに兵倦み、兵糧もとぼしく、もとより譜代の臣でもない野武士の部下は、日のたつほどひとり去りふたりにげ、この陣地をすて去るにちがいない。
「軍師、軍師、小幡民部どの!」
ふいに、耳もとでこうよぶ声。
あれやこれ、思いしずんでいた民部が、ふと、見あげると、巽小文治と加賀見忍剣が連れ立ってそこにある。
「オ。これはご両所、なんぞご用で」
「一昨日からかなたにあって、待ちわびている者が、もういちどこれを最後として、若君へお取次ぎを願って見てくれいと申して、いッかなきかぬ。――軍師から伊那丸さまへ、もういちどおことばぞえねがわれまいか」
「おお、上部八風斎のことですか、その儀は、拙者からも再三若君のお耳へいれたが、断じて会わんという御意のほか、一こうお取上げにならぬしまつ。事情をいうて追いかえされたがよろしかろう」