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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

すこしもはやく安土城へ帰って、この由を復命するのがじぶんの役目、もとより秀吉公は、呂宋兵衛には、あまり重きをおいていられないのだ、そうだ、その勝敗を見とどけたら、すぐにも安土へ立ちかえろう」

臍をきめたが、色にはかくして、大手の形勢を観望している。

そこには、たちまち矢叫び、吶喊の声、大木大石を投げおとす音などが、ものすさまじく震撼しだした。濛――と、煙硝くさい弾けむりが、釣瓶うちにはなす鉄砲の音ごとに、櫓の上までまきあがってくる。

おりから、望楼の上へ、かけあがってきたのは、轟又八であった。黒皮胴の具足に大太刀を横たえ、いかにも、ものものしいいでたちだ。

「お頭領に申しあげます」

「どうした、戦いのもようは?」

「城兵は、一の門二の門とも、かたく守って、破れる気づかいはありませぬ。だがかれもまた、伊那丸をせんとうに、一歩もひかず、小幡民部のかけ引き自在に、勝負ははてしないところです。これは、丹羽昌仙のれいの蓑虫根性から起ること、なにとぞ、とくにお頭領よりこの又八に、城外へ打ってでることを、お許し願わしゅうぞんじます」

「む、では汝は城門をおっ開いて、いっきに、寄手を蹴ちらそうというのか」