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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「わーッ」
と、地軸をゆるがす歓喜の声。
「わーッ」
と、ふたたびあがる乱軍のなかの熱狂。しばしは、鳴りもやまず、三河勢はその勢いと、新手の精鋭のために、さんざんになって敗走した。
木隠龍太郎は、やはり愛すべき武士であった。かれはついに、主君の危急に間にあった。
それにしても、かれはどうして、小太郎山から、四百の兵を拉してきたのであろう。それは、かれについてきた兵士たちのいでたちを見ればわかる。
陣笠も具足も、昼のあかりで見れば、それは一夜づくりの紙ごしらえであろう、兵はみな、小太郎山の、とりでの工事にはたらいていた石切りや、鍛冶や、大工や、山崩しの土工なのである。武器だけは、砦をつくるまえに、ひそかに、蓄えてあったので不足がなかった。
この成算があったので、龍太郎は四日のあいだに、四百の兵を引きうけた。そして、その機智が、意外に大きな功をそうした。
しかし、一同は、ほッとする間もなかった。ひとたび、兵をひいた亀井武蔵守は、ふたたび、内藤清成の兵と合して、堂々と、再戦をいどんできた。
のみならず、人穴城を発した呂宋兵衛も、すぐ六、七町さきまで野武士勢をくりだして、四、五百挺の鉄砲組をならべ、いざといえば、千鳥落としにぶっぱなすぞとかまえている。