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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「なにをッ」

竹童は、焔のついた松明で、蛾次郎の鈍刀をたたきはらい、とっさに、鷲をばたばたと舞いあげた。蛾次郎はそのするどい翼にはたかれて、

「あッ」

と、四、五間さきの流れへはねとばされたが、むちゅうになって、飛びあがり、およびもない両手をふって、

「やーい、竹童、竹童」

と、泣き声まじりに呼びかけた。

けれど、それに見向きもしない大鷲は、しずかに、宙へ舞いあがって、しばらく旋回していたが、やがて、ただ見る、一条の流星か、焔をくわえた火食鳥のごとく、松明の光をのせて、暗夜の空を一文字にかけり、いまや三角戦のまっ最中である人穴城の真上まで飛んできた。

虎穴に入る鞍馬の竹童

一

軍令をやぶって抜けがけした轟又八が、伊那丸がたのはかりごとにおちて、ついに首をあげられてしまったと聞き、人穴城のものは、すッかり意気を沮喪させて、また城門を固めなおした。

敗走の手下から、その注進をうけた丹羽昌仙は、

「ええいわぬことではないのに……」と苦りきりながら、望楼の段を踏みのぼっていった。

そこには、宵のうちから、呂宋兵衛と、可児才蔵が床几をならべて、始終のようすを俯瞰している。