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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「いたい、いたい。苦しい」

竹童も、呂宋兵衛の手下にしては、どうもすこし、手強いやつに捕まったとうめきをあげた。

「痛いのはあたりまえだ、うごけばうごくほど、急所がしまる」

「殺してくれ、もう死んでもいいんだ」

「いや、殺さない」

「首を斬れ」

「首も斬らぬ。いったいきさまは、どこの何者だ」

「聞くまでもないではないか、おいらはいつか、果心居士さまのお使いとなって、この城へきたことのある鞍馬山の竹童だ。首の斬り方をしらないなら、さッさと、呂宋兵衛の前へひいていけ」

「ウーム、鞍馬山の竹童というか」

可児才蔵も、心中舌をまいておどろいた。

安土の城には、じぶんの主人福島市松をはじめ、幼名虎之助の加藤清正、そのほか豪勇な少年のあったことも聞いているが、まだこの竹童のごとく、軽捷で、しかも大胆な口をきく小僧というものを見たことがない。

四

竹童はまた竹童で、才蔵に組みふせられていながら、肚のなかで、ふとこんなことを思った。

「こいつはおもしろい、いましかけてきたあの綱火が、松明の火からだんだん燃えうつって、もうじきドーンとくるじぶんだ。そうすれば煙硝庫も人穴城の野武士も、この望楼もおいらもこいつも、いっぺんにけし飛んでしまうんだ」