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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
鷲盗み
一
ところが、その水車小屋には、一昨日からひとりの男が張りこんでいた。
呂宋兵衛から、張り番をいいつけられていた早足の燕作。毎日たいくつなので、きょうは通りかかった泣き虫の蛾次郎を、小屋のなかへ引っぱりこみ、このいい天気なのに小屋の戸を閉めきったまま、ふたりでなにかにむちゅうになっていた。
鷲盗み
一
入口も窓も閉めきってあるので、水車小屋のなかはまっ暗だ。ただ、蝋燭が一本たっている。
そこで、早足の燕作が、泣き虫の蛾次郎に、よからぬ秘密を、伝授している。
なにかと思えば、かけごとである。するものに事をかいて、かけごとの方法をつたえるとは、教授する先生も先生なら、また、教えをうける弟子も弟子、どっちも、褒められた人物でない。
「おい蛾次公、まだふところに金があるんだろう、勝負ごとは、しみッたれるほど負けるもんだ、なんでも、気まえよくザラザラだしてしまいねえ」
「だって燕作さん、いまそこへだした小判は?」
「わからねえ男だな、いまのはおまえが負けたからおれにとられてしまったんだよ。それを取りかえそうと思ったら、いっぺんに持ってるだけかけて見ろ」
「だって負けると、つまらねえや」