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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
そらは無月、紺紙に箔をふきちらしたかのごとき星月夜、――五遊星、北極星、北斗星、二十八宿星、その光芒によって北条流軍学の星占いをたてているらしい昌仙は、しばらくあってのち、なにかひとりうなずいて、もとの席へもどり、呂宋兵衛にむかって、離散逃亡の急策をさずけた。
「ではなんとしても、おれもひとりとなり、そちもひとりとなり、他の者どももみなばらばらとなって、退散せねば危ないというのか」
蛮流幻術にたけて、きたいな神変をみせる呂宋兵衛も、臆病な生まれつきは争えず、語韻はふるえをおびて昌仙の顔をみまもっていた。
「ざんねんながら、富岳の一天に凶兆れきれき、もはや、死か離散かの、二途よりないようにぞんぜられまする」
「伊那丸ずれに亡ぼされて、ここに終るのも、無念至極。ウム……では、ひとまずめいめいかってに落ちのびて、またの時節をうかがい、京都へあつまって、人穴城の栄華にまさる出世の策を立てるとしよう」
「なるほど、京都へまいれば秀吉公のお力にすがることもでき、公卿百官の邸宅や諸侯の門など甍をならべておりますから、またなんぞうまい手蔓にぶつからぬかぎりもござりますまい。