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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

しめて、七人。

そのなかに呂宋兵衛が三人もいる。ふたりはむろん昌仙がとっさの妙策でつくった影武者だが、どれが本物の呂宋兵衛か、どれが影武者か、夜目ではまッたくけんとうがつかない。

「燕作、燕作」

昌仙は用心ぶかく、裏口へ首だけだしてどなってみた。矢はしきりに飛んでくるが、さいわい、まだ伊那丸の手勢はここまで踏みこんでいなかった。

「燕作、逃げ口をあんないしろ! 燕作はどこにいるんだ」

「あ、昌仙さまでございますか」

「そうだ、呂宋兵衛さまをお落としもうさにゃならぬ、うまい逃げ口が見つかったとは、どこだ」

「ここです――ここです」

「どこだ、そちはどこにいるんだ」

「ここですよ。昌仙さま、呂宋兵衛さま、はやくここへおいでなさいまし」

「はてな?」

流れ矢があぶないので、七人とも首だけだして、裏手の闇をズーと見わたしたが、ふしぎ、すぐそこで、大きくひびく燕作の声はあるが、どこをどう見つめても、かれのすがたが見あたらない。

とたんに、表のほうへ、伊那丸の手勢が乱入してきたのか、すさまじい物音。逃げだした部下もあらかた生けどられたり斬りたおされた気はいである。

「それッ、ぐずぐずしてはいられぬ」