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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

窓をはなれて、重い扉をギーとひらく。と、待つ間おそしの勢いで、飛びこんできた九郎右衛門、片目をおさえたまま、呂宋兵衛の寝台の上へ、ゴロリとあおむけに寝てしまった。

「どうしたんだ、耳のほうへ血がたれてくるではないか」

「すまねえが兄貴、この左の目へささッている物を、そッとやわらかに抜きとってくれないか」

「いいとも、だが、棘でもさしたのか」

「針だ、針がささッてるんだ」

「針?」

「ウン、ゆうべ沖の客船から、四、五人の旅人をさらってきて、この下の穴蔵へほうりこんでおいたのだ。そこでいま手下どもと、ひとりひとりの持ち物や身の皮をはいでいると、そのなかにふんじばられていた婆めが、いきなりおれの顔へ針をふきつけやがったんだ。ア、痛、……なにしろ早く抜いてくれなきゃ話もできねえ」

「うごいてはいけないぞ、いま洗い薬を、こしらえているから」

「たのむからはやく……」

「よし、じッとしていろよ」

と、多少蛮法の医術にも心得があるらしい呂宋兵衛、口をもって龍巻の眸にふかく突きささっている針をくわえとり、すぐ洗い薬をあたえておちつかせた。

すると、四、五人の手下が、扉口から首をだして、