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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

さすがに木隠龍太郎は、兄弟弟子の竹童を、明けくれ忘れていないのである。

去年の晩秋――人穴城をおとし法師野の里に凱歌をあげた武田伊那丸は、折から冬にかかってきたので、幕下の旗本をはじめ二千の軍兵をひきいて、ひとまずこの小太郎山へ引きあげたのだ。

しばらくは、この山城で冬ごもりだ。

陣具をつくり武器をとぎ、英気をやしなわせて、春の雪解けをまっている。

で、おん大将をはじめ軍師の民部も、咲耶子も、みな一家のごとく団欒して、この冬をこし、初春をむかえたのであるが、ただひとり、人気者の竹童がいないのは、なにかにつけて、だれもがさびしく感じていた。

竹童よ、竹童よ。おまえはいったいどこにいるか?

ああ、クロの行方がわからないように、竹童のたよりもいっこうわからない――と、いまも龍太郎が灰色の空をあおいで長嘆していると、バラバラと、砦の柵の方から、ひとりの番卒がかけてきた。

「木隠さま! 加賀見さま!」

「なんじゃ」

煙のかげからふたりの声が一しょにおうじた。

「ただいま、巽小文治さまと山県さまが、ふもとのほうからこちらへのぼっておいでになります」

「オオ、かえってきたか!」