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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「なあ昌仙、そんなものじゃないか」
「仰せのとおり、こうなるのも、頭領のご武運のつよい証拠でござる」
そばにいて、相槌を打ちながら、頭をさげた武士の容形、どこやら、見たようなと思うと、それもそのはず、人穴落城のときに、法師野までともに落ちてきて別れわかれになった軍師、丹羽昌仙だ。
席には、昌仙以外にも、人穴城から落ちのびてきた野武士もあり、あらたに加わったやくざ浪人もいならんでその数四、五十人、呂宋兵衛のお流れをいただきながらどれもこれも、軽薄なお追従をのべたてている。
三
ところへ、朱門をぬけて、本堂の階段からバラバラと駈けあがってきたのは早足の燕作。
「お頭、とうとう目っけてまいりました」
と、廻廊のそとへ、膝をついて大汗をふいた。
「おう、燕作か」
と、呂宋兵衛は、大広間からかれのすがたを見て、
「目っけてきたとは吉報らしい。ではなにか、勝頼の在り家が、知れたというのか」
「へい……それなんで」と燕作は、唾で喉をうるおしながら、
「じつあ、きょうも、それを探索するために、蚕婆とふたりで、加茂川の岸をブラブラ歩いていると、ごしょうちでがしょう、あの鞍馬の竹童のやつがボンヤリ堤に腰かけていたんです。