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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「龍太郎――」
と、こなたにいた伊那丸は、息をのんでかれの袖をひいた、そしてなにかささやくと、龍太郎はうなずいて、ひそかに、例の仕込杖の戒刀をにぎりしめた。いざといわば、一気におどりこんで、木隠一流の冴えを見せんとするらしい。
ヤッという裂声があたりの空気をつんざいた。鬼玄蕃星川が斬りこんだのだ。朱い槍がサッとさがる――玄蕃はふみこんで、二の太刀をかぶったが、そのとき、流星のごとくとんだ槍の穂が、ビュッと、鬼玄蕃の喉笛から血玉をとばした。
「わッ――」と弓なりにそってたおれたと見るや、のこる三人の侍は、必死に若者の左右からわめきかかる、疾風か、稲妻か、刃か、そこはただものすごい黒旋風となった。
「えいッ、木ッ葉どもめ!」
若者は、二、三ど、朱柄の槍をふりまわしたが、トンと石突きをついたはずみに、五尺の体をヒラリおどらすが早いか、社の玉垣を、飛鳥のごとく飛びこえたまま、あなたの闇へ消えてしまった。
バラバラと武士もどこかへかけだした。あとは血なまぐさい風に、消えのこった灯がまたたいているばかり。
「アア、気もちのよい男」
と伊那丸は、思わずつぶやいた。
「拙者も、めずらしい槍の玄妙をみました」