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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
二
そのふたり。
手をつなぐように、階段の上へ大手をひろげて、
「待て! 酔いどれッ」
「ここを通すことはまかりならぬ!」
どッちの声も、威力がある。
「な、なんだとッ」
頭をおさえられた狼は、ふんぜんと、牙をむいて食ってかかった。
「見うけるところ、二匹とも、乞食にちかい六部と雲水。下手なところへでしゃばると、足腰たたぬ片端者にしてくれるぞ」
「酔いを醒ませ、この白痴者! ここをいずこと心得ておるのだ」
「オオ、ここは紫野の今宮神社、八神殿と心得ておる。それが一たいどうしたのだ」
「ははは。生酔い本性にたがわずだ。このバカ侍どもよく聞けよ。それ、日の本の武士たるものは、弱きをあわれみ、力なき者を愛し、神仏をうやまい、心やさしくみだりに猛きをあらわさず、知をもって、誠の胸とするのが、真の武士というもの――」
色白な若僧が、右手の禅杖を床へついてから、諭したが、そんなことに、耳をかすかれらではない。
「エエ、口がしこいことを申すな。われわれをただの浪人者と思いおるか。おそれ多くも、羽柴どのよりお声がかりで、天ヶ丘一帯の取りしまりをなす、南蛮寺の番士だぞ」
「だまれッ、番士であろうと秀吉じしんであろうと、民をしいたげ、神をけがするなど、天、人ともにゆるさぬところじゃ」