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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「ゆるすゆるさぬはこっちのことだ。南蛮寺へことわりなしに、ぎょうぎょうしい祭や踊りをなすゆえに、この神主へかけあいにまいったのが悪いか。やい、じゃまだッ、そこをどかぬと、うぬらも血まつりにするぞ」

「きさまたちのいい分は腑におちぬ。秀吉ほどな人物がさような沙汰をするはずがない。アアわかった、主もなし能もなしに、かようなことをして、良民をくるしめ歩く野武士だなッ」

「野武士とは無礼なことを申すやつ。耳をかッぽじって聞いておけ、いま、天ヶ丘の南蛮寺を支配する、和田呂宋兵衛さまの身内人、斧大九郎とは拙者のことだ」

「やッ、呂宋兵衛? ……」

と、六部は若僧と目ばやくうなずき合って、

「うむ、呂宋兵衛の手下ときけばなおのこと!」

「なおのことどうしたッ」

いきり立って駈けあがってきたやつを、グイと右手で猫づかみにつるしあげた若僧、

「間答無用! こうしてやる」

すこし力を入れたかと、思うと、ふわりと宙へおよがせて冠桜の根瘤のあたりへ、エエッ、ずでーんと気味よくたたきつけた。

「うぬッ」

と、また飛びついてきたやつは、待ちかまえていた六部が、気合いをかけた当身のこぶしで、顎をねらってひと突きに、突きとばす。