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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「どうだい大将――」

と、あざわらった。

「なんだと」

「おもらいがたくさんあるかい。え、お菰さん」

「…………」

「はははは、さすがは偉いもんだ、果心居士のお弟子さんはな。鞍馬の竹童はえらいよ偉いよ、とうとう花の都へでて、天下のお乞食になったんだからな」

「だれだ、だれだッ、おいらの名を知っているのは?」

「おめえ、盲のくせに勘がわるいな。アアにわか盲だから、声まで見えなくなったのか。じゃアいって聞かしてやろう。びっくりして気絶するなよ。こう申す者こそはすなわち、おめえのクロを頂戴して、天下に名をあげている蛾次郎さまだア」

「なにッ! 蛾次郎だとッ」

さけぶや否、鞍馬の竹童、般若丸の名刀をピュッと抜きはなって、声のするほうを、さッと斬りはらった。

まさか鞍馬の竹童が、こんな名刀を持っていようとは夢にも知らなかった蛾次郎、アッといって床下からころげだし、すぐむこうにあった小屋のなかへ、四つンばいにかくれこんだ。

が、そこはれいの神馬小屋であったので、注連飾りをつけた白馬が、ふいの闖入者におどろいて、ヒーンと一声いなないたかと思うと、飛びこんできた蛾次郎の脾腹を蹄でパッと蹴りかえした。