轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
かれをにらんだ二つの眸からは、こらえきれない熱涙が、ハラハラとはふり落ちてとまらない。
この家康めが、織田と力をあわせ、北条をそそのかして、武田の家をほろぼしたのか、父母や兄や、一族たちをころしたのか――と思うと、くやし涙は、頬をぬらして、骨に徹してくる。眼もらんらんともえるのだった。
「若君、若君……」
と、龍太郎はそッと膝をついて目くばせをしたが、伊那丸は、さらに心情をつつまなかった。
「おお……」と家康はうなずいて、そしてやさしそうに、
「父の領地は焦土となり、身は天涯の孤児となった伊那丸、さだめし口惜しかろう、もっともである。いずれ、家康もとくと考えおくであろうから、しばらくは、まず落ちついて、体をやすめているがよかろう」
家康はなにか一言、近侍にいいつけて、その席を立ってしまった。ふたりはやがて、酒井の家臣、坂部十郎太のうしろにしたがって、二の丸の塗籠造りの一室へあんないされた。伊那丸は、ふたりきりになると、ワッと袂をかんで、泣いてしまった。
「龍太郎、わしは口惜しい……くやしかった」
「ごもっともです、おさっしもうしまする」
とかれもしばらく、伊那丸の手をとって、あおむいていたが、きッと、あらたまっていった。