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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「手をはなせば、人を落とすまえに、じぶんのからだがお陀仏だぞ。ざま見やがれ、唐変木、突きとばせるものならやッて見ろ」

「おのれきっとか」

「くそうッ!」

と、ののしり合った空のけんか。

両手をはなして組みあえば、蛾次郎のいう通り、鷲の上からふりすてられてしまうので、片手と片手のつかみ合い。

蛾次郎は猫のごとく爪をたって、竹童の頬ッぺたをひっかいたが、指にかみつかれたので、びっくりして手を引っこめ、こんどはいきなり対手の髪の毛を引っつかんだ。

「うむ! こんちくしょうッ」

竹童は拳骨をかためて、かれの脇のしたから顎をねらった。そして、二つばかり顔を突いたが、蛾次郎も命がけだ。くちびるを噛みしめて、なおも必死にこらえている。

「ちぇッ――強情なやつだ、降参しろ、降参しろ! まいったといわないうちは、こうしてくれる!」

竹童の鉄拳が、目といわず鼻といわず、ポンポン突いてくるので、さすがの蛾次郎も、だんだん色をうしなって顔色まっ青にかわってきた。これがいつもならば泣き虫の蛾次郎、本領を発揮してワアワア泣き声をあげているはずだが、かれも生死の境にたった以上、ふだんよりは相当につよい。