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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

じつに、武田一党の致命的な危難は、目睫にせまっているのだ。

竹童の胸がなんで安かろうはずはない。かれは、一刻もはやく、この大へんを、小太郎山のとりでへしらせたいともだえている。どうしても、四、五日かかる道のりのある小太郎山へ、今夜のうちに、かけつけたいと苦念している。

とうてい、人の力でおよばぬことをなさんがために、竹童は心にもない大道芸人のまねをするのだ。見ているお小姓とんぼはおもしろかろうが、ああ、かれには涙の芸であった。

二

「さあ、それから、それから――」

と、輪になっている前髪たちは、待ちきれないで、あとをせがんだ。

きわどいところで、竹童はたくみにおッとりして、

「さ、火焔独楽の曲まわし、いよいよかかりますがそのまえに、ちょっと、おうかがいしたいことがございます。どうか、話してくださいまし」

「なんじゃ? 独楽まわし」

「あの、近ごろ浜松のご城下で、武田伊那丸という方が徳川さまの手でつかまったそうですが、それは、ほんとでございますか」

「捕まったのはまことじゃ、家来のやつふたりも一しょに」

「ああ、では……」

思わず、あおざめたかと思う顔を、むりに微笑させて、