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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
そのまに、黒川八十松、団軍次郎、そのほかの者が、十二本の槍をそろえて、ドッ――と咲耶子の前後にかかる!
ああもういけない!
咲耶子は近よったひとりを斬って、ふたたび、樺の林へかけこんだ。そこでは、密生している木立のために、十二人がいちどきに彼女を取り巻くことができない。
団軍次郎と神保大吉は、それと見るや否、まっさきに林の細道へふみこんだ。そして、咲耶子を道の尽きるところまで追いこんで、ここぞと、気合いをあわせて、二槍一緒に彼女の胸板へ突いていった。
「あッ!」
一槍ははらったが――もう一槍!
大吉の突きだした大身の槍は、かわす間もなく、咲耶子の胸から白い顎へと!
しまった――と思うと。
不意にどこからかブン――と虻のようにうなってきたひとつの独楽が、槍のケラ首へくるくると巻きついた。むろん、槍は独楽の紐にひかれて、思わぬほうへたぐられてしまった。
「やッ?」
と神保大吉は、あたりのほの暗さに、それを独楽ともなんともさとらずに、力まかせに手もとへひく! と一方の独楽の紐も、負けずおとらず剛力をかけて引ッ張った。
すると、槍の柄に巻きよじれた独楽、双方の力にガラガラッと火を吹いて虚空にまわる――。