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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

諏訪神さまの禁厭灸

一

だが、首尾よくゆかないでも、見物のほうはワイワイいってうれしがった。

木戸銭をだしていない大道芸のせいでもあろうが、とかく人間は、かれの成功よりもかれの失敗をよろこぶ傾向をたぶんにもっている。そして、それが群衆となると、いっそう露骨にぶえんりょに爆発してくるのだった。

「イヨーッ、またしくじった」

「やりなおしの名人」

「小僧、いまにベソをかくぞ」

「どうしたい! 独楽まわし」

「目がまわりそうだとさ。あんまり騒ぐと泣きだすぜ」

「大将、しっかりたのむよ」

とうぜん、出ずべきはずの弥次が、四方からワイワイと蛾次郎をひとりぜめに飛ぶので、さすがに、恥かしいことを知らぬ蛾次郎も、すっかりまいってしまって、三たびめの口上は、自分でもなにをいっているのかわからないように、カーッと頭に血があがってきた。

しかし、こうなるとかれもまた、意地でも見物をあッと驚嘆させてやらなければしゃくである。第一、この水独楽がまわらないというわけはない。

「そうだ、おれがあいつに気をとられて、びくびくしながら、まわしているから、ほんとの精気が独楽に乗りうつらないのだ」

蛾次郎にしてはいみじくも思いついたことである。