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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
二
神伝の火独楽がいかにおそるべき魔力をもっているかということは、だれよりも同じ水独楽の持主蛾次郎はよく知っているので、あいつを、頭の鉢へたたきつけられてたまるものじゃない――と思わずひるんだ。
ことに、じぶんは下、きゃつは上、足場において勝目がない。
黙然として刻一刻。
蟇がなめくじに魔術をほどこしたごとく、じゅうぶんかれの気をのんでしまった竹童は、やがて、一尺二尺と梁の上をはいわたって、蛾次郎のすぐ脳天のところへ片足をブランと垂らした。
「あッ!」
と、腰を立てたとたん、蛾次郎はその足に肩をけられた。どすん! と藁の山に腰をついたが、無意識に、ウヌ、とばかり竹童の足にしがみついて振りまわしたので、かれのからだも梁のうえから落とされて、藁のなかにころげ落ちる。
組んだ!
まるで二匹のりすのように、そこで取ッ組んだ蛾次郎竹童。
つウ! えいッ! くそウ! と下になりゴミをかぶってもみあったが、弾力性のある麦ワラの上なので、どっちもじゅうぶんに力がはいらず、目へチリをいれたり、ほこりを吸いこんで、むせたりしているうちに、両童子同体にゴロゴロゴロと馬糧のワラ山からワラをくずして九尺ほど下へころがる。