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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

髪の毛や袖に移る火を消しあったり、そうしては、力をあわせて、けんめいに戸を破りにかかっているのだ。

ああ、竹童と蛾次郎とが、一つの目的へむかって、こんなに仲よく気をあわせて必死になっているということが、きょうのいままでに、一どでもあったろうか。

なにしろ、ふたりはむちゅうだ、一念だ、死にものぐるいだった。

一方がたおれれば戸をやぶる力が半分になる。

火に負けるな!

この運命を突きやぶれ!

死んでくれるな! 死んでくれるな!

あえて意識しない共和と、たがいの援護がそこに生まれた。裾をあおる炎の熱風よりは、もっと、もっと、つよい愛を渾力で投げあった。

ガラン!

縄が焼けきれたか、すぐそばへ、火の粉をちらして落ちてきた一本の松丸太。

「オオ、蛾次、これを持て」

「よしきたッ」

知恩院の大梵鐘でも撞くように、気をそろえて、それへ手をかけあった両童子、息と力をあわすやいな、

「ええッ!」

「おウッ――」

ドウン! と戸口へ突ッかけた。

「開いたア!」

まさにこれ暁の声だ。

生命の絶叫だ。

ガラガラガラッととつぜん、風と紅蓮の争闘がはじまった下をくぐって、蛾次郎と竹童、ほとんど同時に、打ちこわした所から小屋の外へ、頭の毛の火の粉をはらっておどりだした。