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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

けれど大講会当日の試合はこれだけではない。まだ火術、小具足術、槍、薙刀、鎖、手裏剣、棒、武技という武技、術という術、あらゆるものがふくまれているのだから、はたして、たった三日のあいだに、それだけの試合ができるかどうかもうたがわしい。

晴れのあしたを前にして、なにを密議するのか、その晩、徳川ばたけの者ばかりが、首を集めておそくまで声をひそめていた。

そしてついに、その日はきたのである。

暁雲をやぶる明けがたの一番太鼓。

御岳のいただきからとうとうとながれてきた――。

四

雲表をぬいて南に見えるのは富士である。

甲斐の連山や秩父の峻峰も、みなこの晴れの日を審議するもののように御岳のまわりをめぐっていた。

頂上には蔵王大権現のみ社。

遠いむかし――武神日本武尊が東征のお帰りに、地鎮として鉄甲を埋けておかれたというその神地は、いま、燃えんばかりな紅葉のまッさかりだ。

それを正面のたかき石段にあおいで、ひろい平地の周囲も、またそれからながめおろされる渓谷も、四顧の山も沢も万樹鮮紅に染められて、晩秋の大気はすみきッている。

と――。

頂上の神前で二ばん太鼓が鳴った。