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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「竹童、それはほんとうか」

民部は、目をかれにうつした。

「うそなんかおいら大きらいだ、まったくの話をするとお師匠さまが呂宋兵衛に、おまえの命はこよいのうちにあぶないぞっておどかしたんだよ。おいらはその使いになって、今夜子の刻(十一時から一時)のころに、裾野四里四方人気のないところへでて、層雲くずれの祈祷をすれば助かると、いいかげんなことを教えてきてあるんだけれど、それも、いま考えあわせてみると、みんなお師匠さまがさきのさきまでを見ぬいた計略で、わざとおいらにそういわせたにちがいない」

おどろくべき果心居士の神機妙算、さすがの民部もそれまでにことが運んでいようとは気がつかなかった。

子の刻一天までには、まだだいぶあいだがある。伊那丸は一同にむかい、それまではここにあって、じゅうぶんに体をやすめ、英気をやしなっておくように厳命した。

竹童は勇躍して、

「それでは夜中になると、まためざましい戦いがはじまるな。おいらもいまからしっかり英気をやしなっておくことだ……」

と、クロをだいて、お堂の端へゴロリと寝てしまった。

と、かれは横になるかならないうちに、

「おや、笛が鳴ったぞ」