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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「ちぇッ、釣れねえつれねえ、もうやめた!」
とうとう、かんしゃくを起したとみえて、いきなり竿をビシビシと折って、蘆川のながれへ投げすてた。
「あ、瀞の岩にせきれいが遊んでいやがる。そうだ、これからは鳥うちだ、ひとつ小手しらべにけいこしてやろうか」
と、足もとの小石を三つ四つ拾いとったかと思うと、はるか、流れの中ほどをねらって、おそろしく熟練した礫を投げはじめた。
「やッ――」と、小石に気合いがかかって飛んでいく。
と見るまに、二羽のせきれいのうち、一羽が瀞の水に落ちて、うつくしい波紋をクルクルと描きながら早瀬のほうへおぼれていった。
「どんなもんだい。蛾次郎さまの腕まえは――」
かれはひとりで鼻うごめかしたが、もうねらうべきものが見あたらないので、こんどは、たくみな水切りの芸をはじめた。一つの小石が、かれの手からはなれるとともに、なめらかな水面を、ツイッ、ツイッ、ツイッと水を切っては跳び、切っては跳ぶ、まるで、小石が千鳥となって波を蹴っていくよう。
「七つ切れた! こんどは十!」
調子にのって、蛾次郎がわれをわすれているときだ。
そこから二、三町はなれたところの河原で、ただならぬさけび声がおこった。