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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

もう焼餅を食べつくし、腹はいっぱいになったが、まさか寝ることもできず、半助はいつまでも顔を見せないし、遊ぶところはなし、文句のやり場のないところから、ひとりでブツブツこぼしている。

「いやンなっちゃうな。どうしたんだい、あの人は、向田ノ城へいったら、なんでも好きなものはやるの、うまいものは食いほうだいだのッて、いっておいてよ、ちぇッくそ! ばかにしてやがら、うそつき! 菊池半助の大うそつき!」

腹いせにわめいていると、ふいに、そこへ半助がはいってきたので、さすがの蛾次郎も、これにはすこし間が悪かったとみえて作り笑いをした。

「蛾次郎、さだめしたいくつであったろう」

「ううん、そんなでもなかったよ、だけれど、菊池さんはいままでいったいどこへいってたのさ」

「その方をりっぱな侍に取り立ててやりたいと、城主周防守さまとそうだんしてまいったのだ。どうだ蛾次郎、きさまもはやくりっぱな侍になり、堂々と馬にのったり、多くの家来をかかえて、こんなお城に住んでみたくはないか」

「うふふふふふ、おれをその侍にしてくれるのかい」

蛾次郎は、目をほそくしてうれしがった。

「きっとしてやる。