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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「たかのしれた小人数、かならずこの又八が、一ぴきのこらずひっからげて、呂宋兵衛さまのおんまえにならべてごらんにいれます」
「昌仙の手がたい一点ばかりも悪くないが、なるほど、それでは果しがあるまい。ゆるす、又八、打ってでろ」
「はッ、ごめん」
と会釈をして、バラバラと望楼をかけおりていった。
可児才蔵はそれを見て、
「ああ、いけない」とひそかに思う。
軍師の威命おこなわれず、命令が二途からでて、たがいに功をいそぐこと、兵法の大禁物である。
大手へかけもどった又八は、すぐ、城兵のなかでも一粒よりの猛者、久能見の藤次、岩田郷祐範、浪切右源太、鬼面突骨斎、荒木田五兵衛、そのほか穴山の残党、足助主水正、佐分利五郎次などを先手とし、四、五百人を勢ぞろいしておしだした。
軍師の昌仙がそれを見て、おどろき、怒るもかまわず、呂宋兵衛のことばをかさに、
「それッ」
と、城門を八文字に開いた。
「わーッ」
と、たちまち、寄手の兵と、ま正面にぶつかって、人間の怒濤と怒濤があがった。たがいに、退かず、かえさず、もみあい、おめきあっての太刀まぜである。それが、およそ半刻あまりもつづいた。