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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

虎穴に入る鞍馬の竹童

一

「呂宋兵衛さま」

「おお、軍師」

「又八は城外へでて討死いたしました」

「ウム……」

と、呂宋兵衛は、じぶんにも非があるので、決まりわるげに沈んでいたが、

「おお、それはともかく――」

と、話をそらして、

「伊那丸と徳川勢との勝敗はどうなったな。かすかに、矢さけびは聞えてくるが、この闇夜ゆえさらにいくさのもようが知れぬ」

「いまはちょうど、双方必死の最中かと心得ます」

「そうか、いくら伊那丸でも、三千からの三河武士にとりかこまれては、一たまりもあるまい」

「ところが、斥候の者のしらせによると、にわかに四、五百のかくし部隊があらわれて、亀井武蔵守をはじめ、徳川勢をさんざんに悩めているとのことでござる」

「ふむ……とすると、勝ち目はどっちに多いであろうか」

「むろん、さいごは、徳川勢が凱歌をあげるでござりましょうが」

「さすれば、こっちは高見の見物、伊那丸の首は、三河勢が槍玉にあげてくれるわけだな」

「が、ゆだんはなりませぬ。なるほど、伊那丸がたは、徳川の手でほろぼされましょうが、次には、勝ちにのった三河の精鋭どもが、この人穴城を乗っとりに、押しよせるは必定です」

「一難さってまた一難か。