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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

とたんに、その鋭い気合いが、術気をやぶったものか、鷹は、かーんと黄金板の音をだして、一直線に地上へ落ちていった。

「ウーム、しまった!」

多宝塔の上で、遠術の印をむすんでいた呂宋兵衛、あおじろい額から、タラタラと脂汗をながしたが、すぐ蛮語の呪文をとなえ、満口に妖気をふくみ入れて、フーと吹くと、はるかな、竹童と鷲の身辺だけが、薄墨をかけたように、円くぼかされてしまった。

はじめは、そのうす黒い妖気が、雲のように見えたがやがて、チラチラ銀光にくずれだしたのを見ると……数万数億の白い毒蝶。――打てども、はらえども、銀雲のように舞って、さすがの竹童も、これには弱りぬいた。同時に、さては何者か、妖気を放術してさまたげているにそういないと知ったから、かねて果心居士におしえられてあった破術遁明の急法をおこない、蝶群の一角をやぶって、無二無三に、鷲を飛ばそうとすると、クロは白蝶群の毒粉に眩暈て、翼を弱められ、クルクルと木の葉おとしに舞いおりた。

多宝塔の上から、それをながめた呂宋兵衛、してやったりとほくそ笑んで、塔のなかへ姿をかくしたが、まもなく金銀珠玉の寺宝をぬすみだして、庄屋の狛家へはこびこみ、野武士の残党どもに、酒蔵をやぶらせて、面にくい大酒宴。