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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

どれ、拙者は、これから明け方までに、おゆくえをつきとめて、思うところへお供をしよう」

「この痴れものが」

と、忍剣は真から腹立たしくなって、ふたたび鉄杖をにぎりしめたとき、はるか裾野のあなたに、ただならぬ光を見つけた。

六部の木隠龍太郎も見つけた。

ふたりはじッとひとみをすえて、しばらく黙然と立ちすくんでしまった。

それは蛇形の陣のごとく、うねうねと、裾野のあなたこなたからぬいめぐってくる一道の火影である。多くの松明が右往左往するさまにそういない。

「あれだ!」いうがはやいか龍太郎は、一足とびに、石段から姿をおどらした。

「うぬ。汝の手に若君をとられてたまるか」

忍剣も、韋駄天ばしり、この一足が、必死のあらそいとはなった。

二

ただ見る――白い月の裾野を、銀の奔馬にむちをあげて、ひとつの鞍にのった少年の貴公子と、覆面の美少女は、地上をながるる星とも見え、玉兎が波をけっていくかのようにも見える。たちまち、そらの月影が、黒雲のうちにさえぎられると、裾野もいちめんの如法闇夜、ただ、ザワザワと鳴るすすきの風に、つめたい雨気さえふくんできた。

「あ、折りがわるい――」