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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「おお」

ゆうゆう、右にかわして、さッと鉄杖に寸のびをくれて横になぐ。あな――とおもえば佐分利も一かどの強者、ぽんと跳んで空間をすくわせ、

「ウム、えイッ」

と陣刀に火をふらして斬ってかかる。パキン! パキン! と二ど三ど、忍剣の鉄杖が舞ってうけたかと思うと、佐分利の大刀は、氷のかけらが飛んだように三つに折れて鍔だけが手にのこった。

仕損じたり――とおもったか佐分利五郎次、おれた刀をブンと忍剣の面上目がけて投げるがはやいか、踵をめぐらして、いっさんに逃げだしていく。

時こそあれ、

「えーイッ」とひびいた屋上の気合い。

屋根廂からななめさがりに、ぴゅッと一本の朱槍が走って、逃げだしていく佐分利の背から胸板をつらぬいて、あわれや笑止、かれを串刺しにしたまま、欅の幹に縫いつけてしまった。

三

「何者?」

鉄杖をおさめて、忍剣が廂の上をふりあおぐと、声におうじて、ひとりの壮漢が、

「巽小文治」

と名のりながら、ひらりと上からとび下りてきた。

「なんだ小文治どのか、よけいなことする男じゃ」

「でも、あやうく逃げるようすだったから」

「だれがこんな弱武者一ぴき、鉄杖のさきからのがすものか」