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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

「はやまって、失礼もうした」

「いや、なにもあやまることはござらぬよ」

と忍剣は苦笑して、さきに打ちたおした黒衣の影武者をのぞいたが、呂宋兵衛の偽者と知って舌打ちする。小文治は敵を串刺しにして、大樹の幹につき立った槍をひき抜き、穂先の刃こぼれをちょっとあらためてみた。

「して、小文治どの、木隠や山県などはどうしたであろう」

「龍太郎どのは表口から奥の間へはいって、呂宋兵衛のゆくえをたずね、蔦之助どのは、弓組を四町四ほうに伏せて、かれらの逃げみちをふさいでおります」

「ウム、それまで手配がとどいておれば、いかに神変自在な呂宋兵衛でも、もう袋のねずみどうよう、ここよりのがれることはできまい。だが……この井戸はどうやら空井戸らしい、念のためにこうしてやろう」

法衣の袖をまくりあげた忍剣、一抱えもある庭石をさしあげて、ドーンと、井戸底へほうりこむ。それを合図に、あとから駈けあつまってきた部下の兵も、めいめい石をおこして投げこんだので、見るまに井戸は完全な石埋めとなってしまった。

ところへ木隠龍太郎が、うちのなかから姿をあらわして、

「オオ、ご両所、ここにいたか」

「やあ、龍太郎どの、呂宋兵衛の在所は」