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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「おかしら」

と、どなった。

「いよいよあの船へ、角鹿町の和唐屋から一万両の銀を送りこみましたぜ。船積みするところまでたしかに見届けてきました」

「そうか!」龍巻は、苦痛もわすれ、

「して、厦門船は、いつ纜を巻きそうだ」

「いつどころじゃねえ、もう出船のしたくをしているようすなんで、風のあんばいじゃ夕方にも、港をズリだすかも知れませんぜ」

「じゃ、こうしちゃいられねえ。てめえたちは、穴蔵にいる子分を呼びあげて、すぐ沖の鼻へ、船をまわして見張っていろ。おれはあとから、早船で追いつくから」

「がってんです。じゃ、お頭領もすぐにきておくんなさい」

ドカドカと階段を降りていった。

「大そうな仕事じゃあないか」

呂宋兵衛は、いまの話であらかたのもようをさっしていた。

「この角鹿へ煙草を売りこんだ厦門船が、一万両の売り代を積んでかえるやつを、玄海灘あたりで物にしようというたくらみさ。そこでこんどはしばらくこの仲間屋敷へも帰らねえから、兄貴はここで冬を越すとも、また閉めて京都へ立つなりと好きにしてくれ」

「ちょうどいい。じつはおれも、いつまでここにいい心持になってもいられないから、一つゆきがけの駄賃に北ノ庄のようすをさぐり、それを土産に都入りして、うまうまと秀吉のふところへ飛びこむつもりで考えていたところだ。