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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「はてな? まだ夜明けにしては、あまり早すぎるが」

ふと、池の面の障子をひらいてみると、いつか暁の光が、ほのぼのと水にういて、あなたこなたの庭木の花さえ、しらじらと明けはなれている。

「オオ、不覚不覚、あまり話に身がいって、時刻のたつのを忘れていたとみえる」

「ではお館、人目にたたぬうちお暇をいたす」

「お疲れでもあろうが、昼のおでましは、かなわぬおからだ、すぐにお立ちがよろしかろう」

にわかに取りいそいで、三人の僧はそこから、網代笠をかぶり、菊亭晴季に見おくられて、泉殿から池の橋をわたってきた。

すると、四人が橋を渡りおえるとともに、いまがいままで、さえざえと夜明けの光をたたえていたあたりは、また、どんよりとしたおぼろ月夜となり、人声や車の雑音もバッタリ聞えなくなった。

「や、や? ……」

立ちどまっていると、ものかげから、ひとりの男、すがたは見せずに、

「お館さま」と、声をかけた。

「だれじゃ」

「番の者でござります」

「ウム、門まわりの小者か。して、なにか変ったことはないか」

「忍びの者が入りこみました」

「なに、忍びの者?」

「はい、徳川家の菊池半助というしのびの名人が」