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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

あれからのち――どこをどう飛んで歩きまわっていたか、あいかわらず、のんきの洒アな顔をして、泣き虫の蛾次郎。南蛮寺の屋根の上から、小手をかざしてひとりごと……

「いいなア、いいなア、さすがに天子さまの都だけあるなあ。オーむこうに見えるのが御所の屋根だな。霞をひいて絵のとおりだ。二条、三条、四条、五条。こうしているあいだにだんだんみえてくる……おッとこんなところで感心していたところでつまらない、はやく一つ腹ごしらえして金閣寺だの祇園だの、ゆっくり一つ見物してこよう」

ふわりと鷲を地へ舞わせて、南蛮寺の朱門へおりた蛾次郎。あッちこッちを見まわしていたが、やがて、天ヶ丘の松林を奥ふかくはいってしまった。

そして、とある松の大木へ、用意の鎖で、鷲の足をしばりつけてから、

「おいおい、クロ公」

と、人間へいうように、いいきかせる。

「おれはな、ちょッと久しぶりだ、きょうはほうぼうあるいてくるから、おれのるすに、どこへもいっちゃいけねえぜ。いいかい、帰りにゃ兎の肉をウンと買ってきてやるからな、たのむぜ、クロ公」

これで安心したらしい。

そこでさて泣き虫蛾次郎、すこし気どって、れいのボロ鞘の刀を差しなおし、松の小道をとって、ふもとの方へ歩きだしながら、みちみち、山椿の葉を一枚もいで唇にくわえ、木の葉笛で調子をとりつつ、へん