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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

――ここにゆうゆうといたずらな日を過すときは、小太郎山の砦もあるいは危うからん。

というおことばなのにそういない!

忍剣もそう解いた。

龍太郎も、それにちがいないといった。

で、武田伊那丸は、いやがうえにも、希望をもった。武者ぶるいとでもいうような、全霊の血と肉との躍りたつのがじぶんでもわかった。

「おのれ和田呂宋兵衛、きょうこそは、かならず汝の手から父君をとり返してみせるぞ」

固くかたく、こう誓った。

そして、予言の文字に吸いつけられていた眸をあげてふと有明けの空をふりあおぐと、おお希望の象徴! 熱血のかがやき! らんらんたる日輪の半身が、白馬金鞍の若武者のように、東の雲をやぶってあらわれた。

夢からさめたようにあたりをみると、舟岡山は水いろにあけている。春のあけぼの! 春のあけぼの! 小鳥はそういって歌っていた。森をこえて紫野の里に、うす桃色の花の雲をひいて、今宮神社の大屋根が青さびて見える。

「夜が明けた!」

竹童が、とびあがるような声でいった。

「おお!」

と龍太郎と忍剣、きッとなって、伊那丸の顔をみながら、

「若君、時刻をうつしては一大事です。