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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
タラタラと鼻血をながして、くちびるの色まで変えたが、まだ参ったとはいわないで、
「ちッ、ちッ、畜生ッ!」
というがはやいか、竹童の腰に差されてあった般若丸の刀に目をつけ、あっという間に、それを抜いてふりかぶった。
雲井にあらそう両童子を乗せて、鷲はいましも満々たる琵琶の湖水をめぐっている。
夜の海月と火の百足
一
はてしもなく舞う大鷲の背なかに、はてしもなき両童子の争闘! 蛾次郎は、敵の剣を抜きとッてふりかぶり、竹童はその腕くびを引ッつかんで、やわか! とばかり般若丸の柄をもぎ取ろうとする。
黒毛ふんぷん、大地の上なら、まさに組ンずほぐれつである。
蛾次郎勝つか? 竹童勝つか。
雲井に賭した命と命! かれも必死、これも必死だ。
だが、大鷲の神経は、かかる火花をちらす活闘が、おのれの背におこなわれているのも、知らぬかのように、ゆうゆうとして翼をまわし、いま、比叡の峰や四明ヶ岳の影をかすめたかとみれば、たちまち湖面の波を白くかすって、伊吹の上をめぐり、彦根の岸から打出ヶ浜へともどってくる。――
さッきから三井寺の丘のふもとに立って、かたずをのんで見つめていた伊那丸と、忍剣、龍太郎の三人は、その巨影がありありと目前へ近づいたせつなに、