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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「は、かしこまりました」
ヒラリと溜りへかえった加藤孫一、使番目印の黄幌に赤の差旗を背につッたて、馬をあおって、右陣福島市松のところへ馳けとばした。
伊那丸から秀吉があずかったという品、――それは果たしてなんであろうか?
二
伊那丸は与えられた床几によって、秀吉のくるのを待っていた。右には忍剣、左には龍太郎が烱とした眼をひからせている。
張りめぐらした幔幕のそとには、槍の穂さきがチカチカと霜のごとくうごいていた。やがて、加藤虎之助があらわれて、いんぎんに礼をして、秀吉の大将座をもうけ、その脇にひかえていると、順をおって堀休太郎、蜂須賀小六、仙石権兵衛、一柳市介などの、旗本がいならび、やがて幕をはらって、秀吉の碁石縅の姿がそこへあらわれた。
「おお、伊那丸どのな――」
こういいながら秀吉は、ズカリと前へよってきた。その満顔の笑みをみると伊那丸も旧知のような気がして、笑みをもって迎えずにはいられなかった。
「まずもって、あっぱれなご成人ぶりを祝福いたす。つねにうわさはきいておるが、イヤ、さすがは機山大居士の御孫、末たのもしい御曹子じゃ……」
みじんのわだかまりもなく、胸をひらいて手をつかんだ。