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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

しかし、それもそれだが、まったくみじめな、乱世の子供たちの慈父となる生涯も、けっして悪い目的ではない。ことに、いま、この島には、じぶんが心をそそいで救いかけている竹童という少年、蛾次郎という少年がいる。

もう、からだはなおったが、からだだけなおしてやっただけでは、まんぞくとはいえない。ふたりの境遇や、心までも、幸福に健全にして、そして、この竹生島をだしてやりたいと、かれは願った。

三

でいまここに、蛾次郎の顔をみ、竹童のすがたを見ると同時に、宮内は、湖をへだてたかなたの戦のことも、きれいに心頭から忘れさって、まことに慈父のような温顔になっていた。

「この島からだしてくれといわれるか?」

「はい」竹童はキチンとすわって、そしてすなおに、

「わたくしには、一刻も忘れてはならない主君がありますし、それに、だいじな鷲のゆくえもさがさなければなりませんから……」

「おお、おまえは主人持ちか。してそのお人という者の名は?」

「ここでは、お話し申されません。ですが、お師匠さまの名まえなら、打ちあけてもかまわないでしょう。わたくしは鞍馬山の僧正谷にいる果心居士先生の弟子のひとりでございます」