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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
オオ落花みじん、相手はふんぷんたる白点につつまれたであろうと見ると、それとはちがって、竹童の手からパッと生まれて飛んだのは、まッくろな羽に赤い渦のある鎌倉蝶々、――蛾次郎の目へ粉をはたいてすぐにどこかへ消えてしまった。
いよいようろたえた泣き虫の蛾次郎、たわいもなく竹童の足がらみにけたおされて、ギュッと喉笛をしめつけられ、さらにうらみかさなる拳の雨が、ところきらわずに乱打してきそうなので、いまは強がりンぼの鼻柱がくじけたらしく、
「たッ、たすけてーッ、神主さま、神主さま」
最前、ここをだしてくれなければ、火をつけるぞと悪たれを吐いていた、その弁天さまのほうへ、声をしぼって救いをよんだ。
二
その晩である。
瘤だらけになった蛾次郎と、みみずばれをこしらえた竹童とが、菊村宮内の住居のほうで、かた苦しくすわらされていた。
昼間、もう少し蛾次郎がやせがまんをしていたら、竹童のためにしめ殺されていたかもしれない。あのとき、すぐに宮内が馳けつけて引き分けてくれたからこそ、かれの頭が多少のでこぼこを呈しただけですんでいる。
「なんとしても、ふたりは死ぬまで、敵となり仇となり、仲よくしてはくれないというのか。