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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「だが? ……」と宮内はまたなにか考えて、

「明日までにはまだだいぶ間がある。たがいに顔を見ているとツイつかみ合いをやりたくなるから、向こうへゆくまでの間、これをかぶって双方口をきかぬことにしているがよい」

と、奥へいって持ってきたのは、ふるい二つの仮面である。あおい烏天狗の仮面を蛾次郎にわたし、白い尊の仮面を竹童にわたした。

それをかぶらせておいてから、宮内はも一つのほうの箱を開けてふたりの前に妙なものをならべてみせた。

なにかと思って目をみはった蛾次郎が、

「オヤ、独楽だ!」と、すぐに手をだしそうになるのを、

「まあ、お待ち」

と宮内がそれをおさえて、じぶんの両手に一箇ずつ持ち、さて、ふたりの者へ、たのむようにいうには、

「この古代独楽は、竹生島の宮にあった火独楽と水独楽という珍しいものだ。この火独楽を地に打ってまわせば、火焔のもえて狂うかとばかりに見え、この水独楽を空にはなせば、サンサンとして雨のような玉露がふる……」

「おもしろいな!」

説明をきいているうちに、蛾次郎、もう瘤のいたさを忘れて盗んでもほしそうな様子をする。

「これこれ、そうおもしろいことばかり聞いてくれては、わしが話をする意味がなくなる。