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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「どこに住むかわからないが、てめえもこれからは、無断でほうぼうとんであるくと承知しないぞ」

「へ、へい」

「どこまでもおれについていろ。そして一人前の鏃師になったら暇をくれてやる。お、そんなことはとにかく、おれがここへきたことを、竹童に知られてしまったから、もう永居をしているのはぶっそうだ。鏃師卜斎にすがたをかえて、夜の明けないうちに、竹生島をでるとしよう」

卜斎は陣羽織をすててつぎに、手ばやく籠手の具足をとり、脛当の鎖を脚絆にかえて、旅の鏃師らしいすがたにかわった。そして蛾次郎に、

「菊村宮内どのへ、ちょっとお暇をつげてまいるから、おまえも、そのあいだに支度をして、ここに待っているんだぞ」

と、いいのこして、そこを立とうとすると、なんだろう? 周囲の闇――樹木や笹や燈籠のかげに、チカチカとうごく数多の閃光。

槍だ――槍の穂先だ。

いつのまにか、卜斎と蛾次郎のまわりには、十数槍の抜身の穂尖、音もせずに、ただ光だけをギラギラさせて、芒のように植えならんでいた。

「さては、秀吉の陣から、もう追手がまわってきたな」

卜斎ははやくも観念して、飾りをとった陣刀を脇差にぶっこみ、りゅうッ――と抜くがはやいか、その槍襖の一角へ、われから血路をひらきに走った。