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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

そこで日本独楽のはじまりは、行成大納言、小松つぶりに村濃の糸をそえまして、御所でまわしたのがヤンヤとはやりだしました初め。さあそれからできましたこと、できましたこと、竹筒の半鐘独楽をはじめとしまして、独楽鍛冶もたくさんできました。陀羅ゴマ銭ゴマ真鍮ゴマ、ぶんぶん鳴るのが神鳴りゴマ、おどけて踊るが道化ゴマ、背のたかいは但馬ゴマ、名人独楽は金造づくり、豆ゴマ、賭ゴマ、坊主ゴマ、都ではやっておりまする。そこで手まえのあつかいますのは、近江は琵琶湖の竹生島に、千年あまり伝わりました、希代ふしぎな火焔独楽――はい、火焔独楽!」

と、ここに竹童が、にわか芸人の口上をうつして、弁にまかせてのべ立てると、万千代はじめ、とんぼ組、パチパチと手をたたいて無性にうれしがってしまった。

だが、竹童は、真剣である。

口に道化ても肚のそこでは、たえず、伊那丸の危急をあんじているのだ。

さきに、都田川の刑場へ、したくにいそいでいったあの足軽のはなしが事実ならば――

武田伊那丸と忍剣と龍太郎とが、むなしく徳川家の手に縛されて、あさっての夕ぐれ、河原の刑場に斬られるという、あの高札が事実ならば――