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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
喝! 南無阿弥陀仏ッ――」
ドボーンと都田川の流れへ首をほうりこんだ。
その水音があがったとたん。
獄門番の寝るむしろ小屋から、銀の鞭をたずさえた黒衣の伴天連、豹のごとくおどりだして、
「計略ッ、図にあたった!」と絶叫した。
だれかと思えば、それこそ、和田呂宋兵衛なのであった。
「ウウむ、網にかかった!」
と、呂宋兵衛の叫びにこたえてどなったのは、隠密頭の菊池半助、いつのまにか、三人の背後に姿をあらわして、
「しめた! 伊那丸主従のやつら、そこを去らすな」
と四方へ叱咤する。
同時に、ピピピピピ……と二人が音をあわせて吹いた高呼笛につれて、河原のかげや草むらの中から蝗のように、わらわらとおどり立った百人の町人。これ、その日見物のなかにまぎれこませておいた菊池半助配下の伊賀衆、小具足十手の腕ぞろい、変装百人組の者たちであった。
さらに見れば、川向こうから三方ヶ原のおちこちには、いつか、秋霜のごとき槍と刀と人影をもって、完全な人縄を張り、遠巻きに二重のにげ道をふさいでいる。
鉱山掘夫の知らぬ山
一
そのおなじ日の落ちゆく陽脚をいそいで、まだ逆川に夕照りのあかあかと反映していたころ、小夜の中山、日坂の急をさか落としに、松並木のつづく掛川から袋井の宿へと、あたかも鉄球がとぶように、砂塵をついて疾走していく悍馬があった。