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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
鉱山掘夫の知らぬ山
一
くろく点々と、その数三頭。
いうまでもなく小太郎山から、伊那丸の急変に鞭をはげましてきた小幡民部、山県蔦之助、巽小文治の三勇士である。
天龍の瀬を乗っきって、遮二無二笠井の里へあがったのも夢心地、ふと気がつくと、その時はもう西遠江の連峰の背に、ゆうよのない陽がふかく沈んで、刻一刻、一跳一足ごとに、馬前の暮色は濃くなっていた。
「暮れたぞ! 暮れたぞ!」
蔦之助は鞭も折れろとばかり、ぴゅうッと馬背を打ってさけんだ。馬もはやいがより以上に、こころは三方ヶ原にいっている。
「刑場はもう近い! 落胆するな、気をくじくな!」
と、民部はいよいよ手綱に勢をつけて、そればかりはげましてきた。
しかし、ああしかし、その三方ヶ原の北端をのぞんだ時には、もう夕刻とはいいがたい、すでに夜である。草と平にうっすらとした月光さえ流れてきた。
すると原の道をちりぢりにくる人かげが見えだした。みな浜松の城下へかえっていく見物人である。それを見ると巽小文治は、
「ウウム、ざんねんッ――間に合わなかった! もはや刑場のことがすんだとみえて、みなあの通りにもどってくる」
と、歯がみをして、われとわが膝を、かかえている槍の柄でなぐりつけた。